新種のカミキリムシを求めて(鹿児島県)

 2001年8月12日早朝、昨年と全く同じ日に、私は宮崎空港にmatsuda氏を迎えに行った。今や恒例?になりつつある、南九州での採集に向かうためである。
 今年は数年来メールでやり取りをしていた鹿児島のH氏にお会いできることになっており、H氏より“鹿児島県で新種のカミキリムシが採集された”との連絡を受けていたため、機会があれば行きたいという思いを少なからず抱いていた。
 初日の宮崎でのオオクワ採集が空振りに終わり、2日目の採集について相談をし合ったが、「折角九州に来たから…」ということで、新種のカミキリムシが採集された鹿児島県の原始林に向かうことになった。
 新種のカミキリムシについては、まだ正式には発表されておらず、どのような色・形なのかなど、あれこれ想像しながらその日の床についた。
 翌日垂水港で待ち合わせをし、そのまま目的地に向かったが、かなり強い雨が降っており、不安一杯のスタートであった。
 車を走らせること約一時間、目的地に着いた時には雨はやや小降りになっていた。
 「これならば…」と灯火をセットし、虫の飛来を待つことにしたが、程なくどしゃ降りの雨と強い風が吹き始め、まさに最悪の状況になってしまった。
 いつもは嫌というほど寄ってくる蛾もほとんど飛来せず、諦めかけていた中、一頭のカミキリムシが飛来した。見るとゴマダラカミキリであった。

 H氏より「このあたりで採れる虫は、取り敢えず何でも持ち帰った方が良いですよ」とアドバイスを受けていたため、「こんな虫で
新種のカミキリムシが生息する原始林

も一応持ち帰るか」とmatsuda氏が毒瓶にしまい込んだ。
 その後天候は全く回復せず、ヒラタの♀が一頭と、ゴマダラカミキリがもう一頭飛来したところで採集を打ち切ることにした。
“何も採れなかったけど、新種のポイントで灯火が張れた楽しい採集行だった”その感想で今回の採集行は幕を閉じた。
 ところが翌日、鹿児島の氏から連絡があった。かなり慌てている様子であったが、聞けば何と“新種のカミキリはゴマダラカミキリにそっくりらしい”とのことであった。
 我々に衝撃が走った。ということは昨日採集したカミキリ(いずれも採集者はmatsuda氏)は世界で3、4頭目(新種は頭採集されている)ということになる。
採集したゴマダラカミキリ
新種「オオスミヒゲナガカミキリ
「捨てなくて良かった…」そうした思いでもう一度採集したカミキリを見てみると、確かに本州で見るものと少し違う。
“物凄い快挙だ!”と一気に色めきたった。
 まだ余韻に浸っていた数日後、matsuda氏から思わぬ連絡が入った。「よくよく調べてみたら、ただのゴマダラカミキリであることが判明しました…」これを聞いて力が抜けてしまった。
 その後鹿児島のH氏から、「同地で新種のカミキリを採集した」との連絡が入った。これこそが正真正銘の快挙である。
 写真を見せてもらったところ、我々が採集したものとは明らかに違っていた。やはり新種発見など、そう甘くはないということだろう
 今回の採集はまさに衝撃続きであったが、喜び・落胆の入り混じる中身の濃い、そして思い出に残る採集行であった。


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