キュウシュウヒメオオ採集記(福岡県)

 虫友のK氏から連絡があり「キュウシュウヒメオオを採りに行きませんか?」と声を掛けていただいた。最近ヒメオオにも興味が湧いていたところであり、「参加させてください」と二つ返事でOKした。
 当日は雨の予報で気をもんだが、曇りで何とか持ちこたえてくれそうだ。私自身初めてのヒメオオ材割り採集ということで、久々にワクワクした気持ちで家を出発した。
 今回の参加者はK氏、K.K氏、S.K氏と私の4名であったが、ヒメオオの材割り採集の経験があるのはS.K氏ただ一人であり、ヒメオオ採集のコツについて、行きの車中で教えていただきながらのスタートである。
 向かうは福岡県東部の某山の山頂付近のブナ帯。
 山頂付近まで国道を走り、ガタガタ道の林道へ入った。
 かなりの悪路であり、普通車ではちょっと走れない。手すりにつかまりながら走ること約3キロで最初のポイントに到着した。
 標高も1000メートルを越えており、空気もひんやりしている。
 植林の多い九州では、ほとんど見ることの出来ない自然林の風景が広がっており、そこかしこにブナの大木が見える。
 車を降りてすぐに林道脇にあるブナの大木を発見し、鉈を入れて見るが食痕が現れない。
 少し削ったところで別の場所に移動することにした。
     

 次のポイントにもブナの倒木が転がっていた。
 しかもここにある倒木はかなり太い。まさに巨木と言うに相応しいほどの木である。
 林道から山の中に入り、その巨木に近づいてみる。
 見るとかなり削られた跡があった。既に誰かがこのポイントで採集を試みたようである。
 いったんその木をあとにし、別の木を見てみることにした。
 近くで倒木をチェックしていたS.K氏が私を呼び寄せた。
 「これがキュウシュウヒメオオの食痕です」と言われて覗き込んでみたが、なるほど行きの車中で教わったとおりの食痕だ。
 次のポイントのチェックに向かったS.K氏のあとを引き継ぎ、食痕をたどってみるが、ブナの木は堅いうえにヒメオオの食痕は長いため、削り進めるのは容易ではない。
 必死の思いで削っているうちに、ポコッと穴があき蛹室が現れた。中に♀の成虫の姿が見える。喜び勇んで取り出してみたが、どうにも様子が変だ。よく見ると残念ながら死んでいた。  

 そうこうしているうちに他のメンバーから声がかかった。
 「hoshiさ〜ん、成虫出たよ〜」
 最初の巨木から出たようだが、あわてて移動し見せてもらうと、そこにはヒメオオ♀の姿があった。
 採集者はS.K氏のようだ。流石である。本日初めての成虫との対面であり、まずは記念撮影。
 35ミリ前後の比較的大型の♀であった。
 一同俄然やる気を出し、全員でその木を削り始めた。
 食痕をたどって慎重に削り進めていくと、程なく大型の幼虫が数頭採集できた。
 しかしこの木は大木の割に当たりの木ではなかったようだ。
 S.K氏の「この感じだと1頭の♀が産んだ幼虫のようですね。もうあまり採れないでしょう」という言葉もあり、次のポイントに移動することにした。
 

 今度は急な斜面を100メートルほど降りたところにある、ブナの倒木をK.K氏が発見した。
 なかなか感じがよさそうである。何箇所かに鉈を入れて感触を確かめてみる。間もなく食痕が現れ、小型の3齢幼虫を数頭採集したが、この木もタコ採れの気配は無い。
 どうしようかと考えていたところ、S.K氏から「ここに良い立枯れがありますから削ってみたらどうですか?」と声がかかった。
 約30メートルほど先のその木まで行ってみると、高さ1.5メートルほどの立枯れがあった。
 削ってみるとヒメオオの食痕だらけなのだが、古いのか何も出てこない。「古いから出るとしたら成虫だと思うのですが…」というS.K氏の言葉を信じ、削り進めていく。
 しばらく削った後に割りカスを掘ってみると、クワガタがひっくり返っている。手に取ってみるとヒメオオの♂(38ミリ)であった。
思いがけずに成虫を採集し、まだいるのではと思い削ってみたが、結局この木から採集できた成虫はこの1頭だけであった。

 一通り削り終ったところで林道に戻ることにした。
 林道まで約100メートルは急な斜面を登らなければならない。見上げてみると果てしなく遠く感じた。
 日頃の運動不足もあり、途中で気分が悪くなる有様で、林道に戻った時には完全にグロッキー状態であった。
 ある程度成果も挙がっていたことから「もう帰ろうか」と言う雰囲気もあったが、我々が山中にいる間にK氏が林道脇で削っていた材をS.K氏が削り始めた。
 S.K氏の動きを見て加わったK.K氏がすぐに♀の成虫を割出した。この木からは既にK氏が♀1頭を割出しており、一同再びやる気モードに突入した。
 私も気分が悪いことなどすっかり忘れて、採集に加わった。
 この木は当たりの木で、右の画像のようなヒメオオの大型幼虫が10頭以上採集できた。
 

 気づくともう6時近くになっており、「そろそろ」と言うことで、採集はお開きとなった。家に着いたときにはくたくたに疲れ切っていたが、キュウシュウヒメオオ採集は予想以上に楽しかった。
 「また行きたい」という思いを残して今回のヒメオオ材割り採集は幕を閉じたが、今度はこのポイントで夏のルッキング採集にも挑戦してみたいと思う。
 末筆ながらポイントの案内ならびに採集のご指導をいただいたS.K氏に心から感謝申し上げたい。


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