初めての離島採集(対馬)

 平成15年8月2日、私は対馬行きの飛行機の中にいた。福岡に来る前は全く意識をしたことの無かった対馬だが、会社の先輩から「一度対馬に遊びにおいで」と声を掛けてもらってから興味がわき始めたのだ。
 それ以来行ってみたいという気持ちが日増しに強くなっていったが、思い立ったらもう止まらないのが私の性格。対馬行きを決心したその数時間後に、飛行機の予約を入れていた。
 飛行機に乗ること約20分で対馬が見えてきた。目の前にある対馬の景色に思わず胸が躍る。
 今回の採集では、会社の先輩の紹介で地元に住むNさんのご家族に山を案内して頂くことになっていた。
 Nさんご一家は対馬の山に精通しており、ツシマヤマネコを年に何十回と目撃する日本一のヤマネコ通なのだ。東大卒のツシマヤマネコ研究家が頭を下げて情報を聞きに来るほどらしい。
 もちろんクワガタにも詳しく、月刊むしのツシマヒラタのギネスを採集したのは実はNさんであった。
 夕方にNさん宅に到着し、夕食をご馳走になった。
 初対面の方にここまでして頂いて良いのだろうかと思いつつ、奥様の美味しい手料理をご馳走になった。
 対馬は日が長い。9時過ぎになり日が暮れた頃を見計らって採集に出かけることにした。

  林道を車で走るが、聞けばいま我々がいるところがツシマヤマネコの一番濃いところらしい。
 ヤマネコも気にしつつ、樹液の出ている木を探す。     ところが樹液の出が余り良くない。シイの木の樹液を中心に探したが、なかなかクワガタの姿が見つからない。
 しばらく探すと太いシイの木にヒラタがついている。大きさからツシマヒラタのようだ。
 網で採集を試みるも残念ながら落としてしまった。
 その後も樹液を見回るも、コクワや高い場所の樹皮に潜むヒラタを見つけただけにとどまった(右の画像は樹液を吸うコクワガタの♀)。
 いったんNさん宅に戻り、みんなは休憩に入ったが、私は一人道路沿いの灯火を見回ることにした。
 灯火で拾えるのはほとんどがコクワであったが、中に一頭だけアカアシが混じっていた。

  灯火に集まるクワガタが少ない。そうこうしているうちにNさん宅から呼び戻しの電話が入った。
 「そろそろまた出かけましょうか」と言うことで、再び車でポイントに向かった。
 向かうは最近オオクワガタが採集されたというポイントだ。対馬のオオクワガタの採集記録は下(しも)に偏っており、上(かみ)で採れたケースはこれまでほとんど報告されていない。期待に胸が膨らむ。
 ポイントに到着するが、このあたりはクヌギの雑木林のようだ。一本一本見回ると、樹液の出ている木でヒラタが何頭か採集できた。
 これまでに回ったポイントの中では最もクワガタが濃いところだ。流石はオオクワポイントである。
 あたりを更に見回るも数頭のツシマヒラタを採集するにとどまり、オオクワを見つけることは出来なかった。 

 朝方4時まで採集にお付き合いいただいたが、その後目立った成果も無いまま対馬での採集は終了した。
 結局対馬での成果はツシマヒラタを10頭採集したに止まり、オオクワをゲットすることは出来なかった。
 帰りがけにNさんからお土産と言うことで、2頭のツシマヒラタを手渡された。見るとこれが大きい。
 サイズを測ると72ミリと73ミリあった。数日前に近くのポイントで採集したものを取っておいてくれたようだ。
 今回は僅か24時間の滞在であったが、島の人との交流も含め思い出深い採集になった。
 初対面の私を泊めて下さったのみならず、夜中まで採集にお付き合いいただいたNさんご一家には、本当にお世話になった。
 今回の採集は対馬の人の情の厚さを感じさせる、爽やかな採集であった。 


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