キュウシュウヒメオオ採集記(宮崎県)

 <第一日目>
 2000年8月12日午前9時30分、私は宮崎空港にmatsuda氏を迎えに行った。 半分冗談のつもりで声をかけた宮崎での採集が実現の運びとなり、期待に胸を膨らませてのスタートであった。
 とにかく今回の事前準備は気合が入った。
 オオクワをメインターゲットとした採集行ではあるが、折角遠くから来てくれる
matsuda氏のためにも、キュウシュウヒメオオとキュウシュウオニだけは絶対に持ち帰らねばという思いがあったからだ。
 これまでの採集実績についての情報収集はもちろん、「九州の山」「宮崎県の山」等の本を買い込んで採集候補地を絞り込み、最終的には環境庁発行の「宮崎県の植物分布」でブナ・ミズナラの分布状況を確認したうえで採集場所を決定した。 
 首尾良くmatsuda氏と合流した後、一路採集ポイントへ向かった。 目的地は宮崎県北部の九州中央山地にある、標高1000m以上の山である。
 お盆で道路が渋滞していたため、ポイントについたのは午後2時過ぎであった。
 最初のポイントでは、道路の脇に車を止めて山の頂上まで林道を登ってみたが、林道といっても桧枝岐のような日当たりの良い開けた林道ではなく、鬱蒼とした感じでヒメオオクワガタのポイントとしては今一つという感じであった。
キュウシュウヒメオオ棲息地の風景

  山頂までの勾配は急峻で、日頃運動をしていない私は途中で気分が悪くなる有り様で、何も採れずに道路に戻った時には、既にグロッキー状態であった。 それから夕方になるまで道路沿いの木という木を見て回るが、キュウシュウヒメオオの痕跡すら見つけられない。本州での採集経験が全く役に立たない。matsuda氏の表情にもやや疲れが見えてきた。
 とその時、matsuda氏が道路脇にあるワンカップの瓶を見つけ、水が溜まった瓶の中からクワガタの死体を取り出した。hoshiさん、これキュウシュウヒメオオの♀じゃないですか?」
小さな個体ではあったが、紛れもなくキュウシュウヒメオオであった。
 棲息している可能性は十分あったものの、実際に見るまでは「宮崎県の山に本当にヒメオオがいるのか?」という気持ちがぬぐえずにいたが、これで間違いなく、今自分がいるポイントにキュウシュウヒメオオがいるという確証が持てた。

 再び気を取り直してルッキングを続けるが、クワガタの姿が一向に見つからない。
 もう今日は時間切れかという夕方6時前になり、
matsuda氏の「いた!」という声が辺りに響き渡った。すぐに駆け寄り、はやる気持ちを抑えてまずは写真撮影。
ツル科の植物にしがみつくキュウシュウヒメオオ(中央やや右)拡大画像あり 採集した♂(本州産に比べて光沢の無さが印象的)

 キュウシュウヒメオオの樹上での姿はなかなか見られないのだが、距離にして約2m、高さは我々の目線より少し上という所にいた。
 距離は近いのだが、下は崖である。落としてしまっては100%取り逃がしてしまう状況であったことから、慎重にフォローし、しっかりとしがみついていたヒメオオをようやくゲットした。この瞬間二人で熱い握手。念願のキュウシュウヒメオオゲットの瞬間である。

二日目へ続く

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