三千里「プチ採集記」


●2003年6月14日(佐賀県) オオクワ(左)と一回り大きなヒラタ
 土曜日というのに今週も夕方遅くまで仕事をしていたところ、ライフ氏から携帯に電話が入った。
 「hoshiさん、♀が採れましたよ」
 今期好調のライフ氏であるが、夕方7時過ぎの段階で、既に一頭ゲットしたようだ。
 それを聞いて思わず言ってしまった。
 「今から行きますけど良いですか?」
 急いで書類の山を片付け、一路高速を飛ばして待ち合わせ場所へ向かった。約40分後にライフ氏と合流し、早速採集したオオクワガタを見せてもらう。
 羽が少しはみ出ているが、きれいな♀である。どうやら新成虫のようだ。
 早速ポイント回りを開始するが、オオクワの姿は見つけられない。ようやく最後に行ったポイントで、樹上10メートルほどの高さにいるオオクワガタのペアを見つけた。7.2メートルの網を伸ばすが、わずかに届かない。しばらくこのポイントで粘るも、結局どうすることも出来なかった。
 私自身はゲットできなかったが、今期初の樹液採集ということもあり、とても楽しい一日であった。

●2003年6月29日(大分県) 大分県産ヒラタクワガタ(58ミリ)
 仕事のストレスが溜まり、どうにも行き詰ってしまった。
 「こうなったらドライブがてら美味しい物でも食べに行こうか」ということで、大分まで足を延ばしてみることにした。
 目的地はこれまで「一度は食べてみたい」と思っていた城下カレイの本場、日出(ひじ)町である。
 ガイドブックに出ていた店に入り、城下カレイに舌鼓を打って店を出たのは午後5時過ぎであった。
 外はまだ十分明るい。急に採集がしたくなり、約30キロ離れた大分県内某所のポイントに向かうことにした。
 ポイントに着いて辺りを散策するが、樹液の出ている木は少ない。
 このポイントの一番の木に向かうが、かなり樹液が出ている。スズメバチが樹液に来ていたが追い払い、洞の中を探ってみると、中には大型のクワガタがいる。
 「ひょっとして!?」という期待感もあったが、出てきたのは58ミリと比較的大型のヒラタであった。
 このポイントは太く感じの良いクヌギが多く、通えば期待が持てそうだ。

●2003年7月26日(宮崎県)
 子供たちが夏休み入ったたため、宮崎の妻の実家にあずけることになった。午後3時ごろに福岡を出発し、高速を飛ばして午後6時頃には宮崎県に入った。
 どうしても寄りたいポイントがあったので、家族の承諾を取り、途中で高速を降りることにした。
 約30分でポイントに到着したが、ここは今年のGWに新たに発見したポイントで、今から10年ほど前にオオクワが採集されたポイントのすぐ近くである。
 ニレの木に「素晴らしい洞」があり、期待を持たせるには十分のシチュエーションであった。
 この木は道路から少し入ったところにあり、木の枝で隠れているためぱっと目には分からない。全く人の入った形跡は無かったので、期待して洞を覗くと大型のクワガタの♂が潜んでいた。慎重に取り出すと60ミリ弱の良形のヒラタであった。
 その後近辺のポイントを幾つか回り、ヒラタを数頭採集した。
 いったん宮崎の妻の実家に着くも、いても立ってもいられず、今度は市内にあるマイポイントへ足を運んでみた。
 高さ4メートル程の洞の入口に黒光りする♀を発見。やや見にくい位置だがオオクワのようにも見える。約一時間粘ると外に出てきたが、残念ながら取り逃がした。あれはオオクワだったのだろうか。

●2003年8月2日(長崎県) ツシマヒラタ(73ミリ)
 一泊二日で対馬に出かけてきた。自身初の離島採集だ。
 午前中に嬉野であった仕事を済ませ、高速を飛ばして福岡空港に到着したのは午後3時過ぎであった。
 対馬行きの飛行機に乗り込むが、初めての対馬行きに多少興奮しているのが自分でも分かる。
 今回は同じ会社の人のご主人と息子さんがポイントを案内してくれた。このご家族は対馬の山に精通しており、ツシマヤマネコの目撃回数日本一とおっしゃっていたが、専門機関から目撃の報告を求められていたことからどうやらそれは本当のようだ。
 夜になり早速ポイント回りを開始する。
 今年の対馬は例年に無く雨が多く、クワガタの数が少ない。何と夜中の4時まで採集につき合っていただいたが、採集できたのはツシマヒラタが10頭ほどであった(コクワ等はカウントせず)。
 最近は対馬のクワガタもかなり数が減っているらしい。
 お土産に数日前に採れたという73ミリと72ミリのツシマヒラタをいただいた。
 初対面でありながら真夜中まで採集におつき合いいただいたNさんのご家族に心から感謝申し上げたい。
 「また行ってみたい…」という思いを残して今回の対馬採集は終了した。詳細採集記はこちら

●2003年8月9日〜8月10日(鹿児島県) 大隅半島某所の台場クヌギ
 9日間のお盆休みに入り、大隅半島に採集に出かけた。
 鹿児島からフェリー、国道を経由して午後3時過ぎにポイントに到着した。まずは同行者のマッスル氏が以前見つけたという台場クヌギを見に行くが、それはそれは立派な台木であった。
 一通り辺りを見回った後、道路沿いの空地に灯下の場所を決めて明かりを灯すが、月齢と風の関係で飛来するクワガタの数は少ない。12時ごろまで張るも約20頭しか飛んで来なかった。
 この日は早々と灯火を諦め、樹液回りに切り替えた。残念ながらオオクワは見つけられなかったが、鹿児島県で僅か1例しか報告の無い貴重なカミキリムシを採集し、この日の活動は終了した。
 2日目は昨日のポイントから照葉樹の原始林を30キロ以上走った所にある、超過疎地に向かった。
 恐ろしい位の過疎地であり、人家もまばらだ。少し山の方に車を走らせると、サルが我が物顔で原始林を飛び回っている。辺りは一面照葉樹の原始林。綾町以外でこれほどの照葉樹林帯は見たことが無い。
 「ここで灯火を張ったらオオクワも来るのでは?」そう期待を抱かせるのに十分な環境であったが、月齢が悪く、飛来したクワガタは僅か2頭であった。
 11時過ぎに灯火を諦め、再び昨日のポイントに向かい、カミキリムシの採集を試みることにした。
 この日は7頭のカミキリを採集することが出来た。(事情があり名前を出すことが出来ないのが残念!)
 オオクワは採集出来なかったが、珍品カミキリの採集、新規ポイント開拓ととても楽しい採集行であった。

●2003年8月13日(岩手県) この日採集したクワガタの一部
 鹿児島での採集の3日後、今度は東北に向かった。朝一の飛行機で羽田に向かい、大宮でタカ氏と合流していざ岩手へ。
 お盆の帰省ラッシュで東北道は混雑しており、目的地に到着したのは午後8時過ぎになってしまった。
 現地ではタカさんの知人であるBAJA氏が灯火を張って待っていてくれた。今日の活動はこの灯火と街灯回りだ。
 この辺りは標高は300メートル程度しかないが、見事なブナがそこかしこに生えている。先日の採集では大量のクワガタが飛来したらしい。どうやら虫は濃いようだ。今季もオオクワガタの採集実績があり、期待をして灯火回りをスタートした。
 夏休みと言うこともあり、キャンプをしに来ている人の姿が目立つ。今日のライバルは親子連れだ。
 灯火を精力的に回るが、月齢の悪さには勝てず、飛来するクワガタの数が少ない。結局約40頭のクワガタを採集したのみで、この日の採集はお開きとなった。
 この日米沢から来られている方にお会いしたが、凄腕の採集人であった。クワ採集談義に花が咲き、楽しいひと時を過ごすことが出来た。気の合う仲間との出会い、これも採集の醍醐味の一つである。

●2003年8月14日(岩手・宮城・秋田県) ブナの大原始林(九州とは自然度が違う!)
 昨日に続いての採集であるが、朝から雨が降っており、気温も低い。折角東北まで来ているのにこの天候は残酷だ。
 厳しい状況であったがそこは楽観的なhoshi-タカコンビ、今日はヒメオオ探しに出かけることにしていたが、岩手・宮城・秋田と3県にまたがるポイントを回るため、どこ産が採れるだろう等と冗談を言い合いながらスタートした。
 しかし実際に回ってみると、クワガタの姿が見つからない。
 ようやくアカアシを見つけゲットする。その後もちらほらアカアシの姿は見つけられるものの、ヒメオオの姿は1頭も見つけられなかった。残念ながら昼の部はタイムアップとなった。
 幸いにして雨は午後には止み、道路も乾いて何とか灯火採集が出来る状況になった。
 今日は自前灯火が無いため、全て街灯回りである。しかし昨日よりさらに気温が低く、クワガタの数が極端に少ない。雨も降ってきたことから気力も無くなり、早々と採集を止めて山形に向けて移動することにした。結局2日続けてのボウズで、かなり焦りが出てきた。

●2003年8月15日(山形県) 道路に現れた野生のサル
 東北採集もいよいよ最終日を迎えた。
 これまでの3日間でオオクワどころかヒメオオすらもゼロという、かつて無いほどの状況に、我々二人は相当な焦りを感じていた。
 「今日は採れる所に行かねば」という強い思いの中、向かったのは、昨夏オオクワ2♀をゲットしている山形県のポイントである。
 昼の間はお決まりのヒメオオ採集。
 近くにヒメオオの鈴なりポイントがあると聞いていたため、今日はヒメオオは何とかなるだろうと思っていたが、結果はその逆であった。
 必死で探し回るも、この日もヒメオオの姿は1頭も見ることが出来なかった(代わりに見れたのはここでも野生のサル)。
 昨年と同じように近くの温泉につかり、鋭気を養ってから灯火採集をスタートした。
 月齢は悪かったが曇っていたため期待を持って灯火を回るが、拾えるクワガタの数が少ない。
 どうやら何組かの採集者が灯火を回っているようだ。
 それでもクワガタはチラホラ拾えたが、この日も本命のオオクワは来なかった。
 結局3日間の採集でオオクワもヒメオオもゼロ。今回の東北遠征は惨憺たる結果に終わった。 

●2003年9月14日(福岡県)
 「明日の採集は1頭も採れないと思って行きましょう」前日の電話で同行者のS.K氏からそう告げられた。
 5月の材割から心待ちにしていたキュウシュウヒメオオのルッキング採集だが、材割で数十頭の幼虫を採集できただけに、私とライフ氏はそんな言葉を聞いても「何とかなるだろう」と高をくくっていた。
 現地についてさあ採集開始。ポイント付近にはアサギマダラが数多く舞っていた。花の蜜を吸う姿がそこかしこに見える。ここはさしずめアサギマダラの楽園だ。
 3人で辺りの木を入念にチェックするが、ヒメオオどころかアカアシの姿すら見つけられない。やはりS.K氏の言う通りなのだろうか?
 本州と違って九州ではほぼ全ての木をチェックしなければならない。目の高さより低い草木などもチェックの対象になる。
 必死で探すも見つけられず、場所を移動することにした。
 向かったのは春先の材採集で、キュウシュウヒメオオの成虫が100頭以上出たというポイントだ。(右の画像はポイント近くの大倒木)
 林道脇だけではなく、材の近辺にある木を探すも全くヒメオオの姿は無かった。見つけることができたのは数年前のものと思われる、キュウシュウヒメオオのかじり痕だけであった。
 やはりキュウシュウヒメオオの第一人者S.K氏の言った通りであった。残念だが今回は惨敗だ。

●2003年9月21〜23日(長崎県)
 会社行事が9月22日にあるため、前日から対馬入りした。
 8月の採集に続いて二度目の対馬であったが、今回は下対馬方面に出かけてみた。対馬のオオクワガタの採集実績は下対馬に集中しており、機会があれば是非行きたいと思っていたからである。
 21日は台風の影響で乗る予定の飛行機が欠航になり、いきなり5時間もロスしてしまった。不安な滑り出しである。
 結局この日は2時間しか時間が無く、ポイントのチェックと倒木からコクワの幼虫を数頭割り出したのみに終わった。
 22日は終日仕事で、残るは23日のみ。最終日は下対馬にある照葉樹の原始林に向かった。
 途中の道路沿いにクヌギの木があったため見回ってみると、ほんの僅かに滲みだした樹液にコクワの♂が来ていた。
 しかし樹液で見れたクワガタはこの1頭のみであった。生き物の気配がほとんど感じられず、樹液は既に終わっている感じだ。
 しばらく車を走らせると原始林に通じる林道の入り口に到着した。
 どうやら林道は車で走れそうだ。ゆっくりと車を走らせるが、鬱蒼とした原始林は見る者を圧倒する迫力がある。
 倒木はあちこちにあったが、条件の良いものは少なく、林道脇にあった立ち枯れから、数頭の幼虫を採集したが恐らくコクワであろう。
 原始林の採集は難易度が高く、私にはちょっと厳しかった。 
 仕事にかこつけての対馬訪問であり、時期的にも中途半端だったようだ。
 離島採集に興味が湧き始めたところだが、もう二度と対馬を訪れることは無いかもしれない。後ろ髪を引かれる思いで対馬を後にした。

●2003年11月2日(福岡県・佐賀県) 佐賀県某所のエノキの切り株
 ライフ氏と福岡・佐賀方面へ採集に出かけて来た。
 オオクワを狙った採集でライフ氏と一緒に出かけたのは何と5ヵ月ぶりだ。「久々の採集に気合も入る」と言いたいところだが、何故か二人とも出発前から疲れ気味であった。
 福岡方面を一通り回り、午後からは佐賀を中心に回ってみたが、手ごろな材はなかなか見つからない。
 佐賀県内で一年前に見つけた切り株を叩いてみるが、出てきたのはコクワ・ヒラタばかりであった。
 久しぶりの材採集であるうえに、今日はこの時期にもかかわらず25℃を越す真夏日とあって、二人とも疲労の色が隠せない。
 結局目立った成果の無いまま、日没となってしまった。
 冬季の材採集もこれからが本番、「今日はウォーミングアップ」と自分を慰めて本日の採集を終了した。

●2003年11月23日(熊本県) 最近は珍しくなったワイルドメダカ
 相変わらず仕事がはかどっていないのだが、気分転換の意味も込めて、ライフ氏・イナカ氏と採集に出かけて来た。
 今日は新規開拓がテーマであったため、これまでほとんど行っていない熊本県の海沿いの地域へ向かった。
 クヌギはポツポツあるものの、パンチの効いた材が見つからない。
 一日中探し回ったが、オオクワの影さえ掴む事が出来なかった。
 代わりと言っては何だが、途中田んぼの畦におびただしい数のメダカがいるのを発見した。今は珍しくなったワイルドメダカだ。
 子供たちがいたら絶対欲しがるのだが、網も入れ物も無かったので、持ち帰ることは出来なかった。

●2003年12月7日(佐賀県)
 朝晩かなり冷え込むようになり、そろそろ下草も枯れて、動きやすくなって来る頃だ。ライフ氏に声を掛け出かけることとなった。
 今日は事情があり午前中だけの採集の予定であり、効率的に回らなければならない。どこに行こうか迷ったが、去年の12月に採集が出来た筑後川流域を攻めてみることにした。
 実際に回ってみて感じたことだが、昨年以上に場荒れしていた。
 至るところに人の入った跡があり、チェーンソーで切り取ったような跡や、相当な高所にまで削り跡が見られた。
 ある程度回ったところで諦め、ライフ氏が以前から寝かせてある巨大エノキに向かうことにした。
 このエノキは数年前からあり、ヒラタケが生えて「いかにも!」と言った雰囲気を出しているのだが、まだもう少し先が良いという判断で、これまで削らずにいたものだ。
 試しに斧を入れてみるがやはりまだ硬い。何頭かの幼虫が出たがコクワのようだ。
 さらにもう少し削ってみると、2齢幼虫のお尻が見えた。硬くてうまく削れず、結局小さな破片の状態で家に持ち帰った。
 家に着くまでにかじり進んだようで、頭部が少し見えていた。アゴが見えないが、頭幅(5ミリ弱)からコクワでは無さそうだ。
 右の画像で同定が可能な方がいらしたら、是非ご一報頂きたい。

●2003年12月21日(福岡県) 福岡市産アカアシクワガタ
 今日もライフ氏と採集に出かけてきた。
 今回は虫友のマッスル氏から情報をいただき、いつもの平野部ではなく、山沿いを中心に動いてみた。
 朝9時過ぎに待ち合わせ場所に集合し、いざ出発。今日も午後2時を目処にした採集のため、あまり時間が無い。
 ポイントがはっきり分からなかったため、ゆっくりと車を走らせて辺りを観察するが、なかなかそれらしい景色に行き当たらない。
 ようやく「ここでは?」というポイントに到着し、めぼしい材がないか付近を散策してみた。
 しかし、なかなか良い材が見つからず、時間だけが経過して行く。
 何の成果もないまま午後2時近くになり、ここでライフ氏はタイムアップ。私はさらに1時間ほど採集を続けたが、アカアシクワガタの新成虫を割り出しただけで、この日の採集を終了した。

●2003年12月23日(福岡県) 本日の成果(コクワ2齢)
 先日の山沿いのポイントが気になり、午後から2時間ほど採集に出かけてきた。
 ここは昨年、タマムシ採集に訪れた採集家が偶然オオクワガタを採集した場所なのだが、針葉樹の中にコナラやその他の広葉樹がパラパラ混じると言った感じで、オオクワガタを目指して採集に来るイメージのところではない。
 先日オオクワ採集の達人の方から「オオクワガタは生息環境を多様に持っている」と教えていただいたばかりであり、これまでの自分であれば簡単に諦めていたこの場所で結果を出したかった。
 しかし、今日もなかなか良い材が見当たらない。
 そろそろ引き上げようかと思っていたところ、足元に直径5cm程のカワラのついた桜の枝が落ちていた。
 細い枝であったが軽く鉈を入れてみると、小型の幼虫が顔を出した。きれいに白枯れしていたので期待を持って取り出したが、残念ながらコクワの2齢(頭幅3mm)であった。


オオクワ求めて三千里−オオクワガタHP−トップへ