三千里「プチ採集記」


●2005年3月20日(熊本県) 3齢に脱皮したヒラタ幼虫(頭幅約10ミリ)
 引越し準備で家中がバタバタとしている中、ふと飼育瓶を手に取って見てみると、前から気になっていた幼虫が3齢になっていた。
 この幼虫は昨年の12月5日に熊本県で採集したもので、当日は広島県から来た知人とともにフィールドを回っていた。
 最近は材割りを自粛しており、ほとんどやらないのだが、お付き合い程度に軽く削った材から割り出した3頭の中の1頭が、右の画像の幼虫であった。
 同定の難しい幼虫で、コクワの3齢にも見えたがどうにも気になり、同行者に「この幼虫ちょっと微妙じゃないですか?」と尋ねてみたところ、一同「う〜ん…」という微妙な返事であったと記憶している。
 最初に3齢になった幼虫を見た瞬間、アゴが尖って見えたこともあり、「これはオオクワ!?」と色めきたったが、よく見てみると大あごはやや曲がっている。
 頭色も薄く、頭も丸いことからヒラタのようだ。残念だが成虫になるまで大切に育てたい。

●2005年3月21日(福岡県) 早春の筑後川
 家中が引越し準備でてんやわんやの状況であったが、思い切って筑後川流域に出かけることにした。
 はっきり言って採ることなど目的ではない。福岡に来て以来大変お世話になった2名の方々(ライフ氏、Ka氏)に、どうしても最後にお会いしたかったのだ。
 福岡に来てからの3年間は、仕事上は苦しいことばかりであったが、周りの方々には本当に良くしていただいた。
 この日も餞別に菌糸材をいただいたり、昼食の弁当までご馳走していただいたりと、大変なお気遣いをいただいた。3人で筑後川を眺めながら食べた弁当は、何とも言えない人情の味がした。
 福岡在任中もほとんどオオクワをゲットすることはできなかったが、沢山の思い出を作ることができた。
 ありがとう九州の皆さん、ありがとう九州のフィールド。またいつの日かこの地に採集に来れることを願って、筑後川を後にした。

●2005年4月17日(埼玉県) 雑木林で見つけたテントウムシの幼虫
 埼玉に来て約3週間が過ぎ、ようやく生活も落ち着いて来た。
 今日は春らしい陽気と言うこともあり、久しぶりに家族と出かけてみることにした。
 向かった場所は埼玉県の嵐山町にある「オオムラサキの森」というところで、夏には国蝶のオオムラサキや雑木林に住む生き物を沢山見ることができる森だ。
 森の中にあるエノキにはネットがかぶせてあり、その中にオオムラサキの幼虫が放されていた。
 クヌギやコナラ等の広葉樹の新緑が美しく、雑木林の中は本格的な春に向けてエネルギーに満ち溢れている感じがした。 
 ふと足元に目をやると、テントウムシの幼虫がいた。シーズンインももう間近。夏が待ち遠しい。

●2005年5月28日(埼玉県) 画像中央付近の黄色っぽいのが卵
 今年はこれまでよりは趣味に割ける時間が増えたことから、飼育数を増やしてみたいと思い、4月に産卵木をセットした。
 親虫は佐賀県産のオオクワガタだが、私が佐賀県で唯一採集したオオクワガタだけに思い入れは深い。
 そろそろかなと思い、虫友のKagawa氏から餞別にいただいた産卵木を割ってみると、オオクワガタの卵を見つけることが出来た。
 あちこちかじられた様子から、他にもかなり産卵していそうなので、産卵木を別のケースに移した。
 これまでは菌糸ビンによる飼育ばかりであったが、今年は材飼育にも挑戦してみたい。 

●2005年7月2日(山形県)
 今回は、旧知の仲であるr.matsuda氏との採集であったが、氏と採集に出かけるのは何と2000年8月以来5年振りとなる。
 この時は宮崎県の秘境椎葉村での灯火採集で、今も思い出に残るワクワクどきどきの採集であった。
 7月に採集に行くなど、去年までの担当業務ではまず考えられなかったのだが、月齢も時期も最も良い条件下の採集だけに、期待に胸が膨らんだ。
 今回はr.matsuda氏が普段灯火を張っているポイントに向かったが、ここは全く人に知られておらず、かなり良いロケーションにあることから、外れ(ボウズ)の可能性は少ないとのことであった。
 灯火セットを組み立て、発電機のエンジンを始動させてみたが、全く問題は無いようだ。
 ミニ灯火セットも用意していたことから、少し離れた場所にそれらをセットし、あとは日の暮れるのを待つだけとなった。
 そろそろと言うことで発電機を始動し、しばらく様子を見ていたところ、突然発電機が止まってしまった。
 あわてて再始動するもエンジンがかからない。
 何度も何度も汗だくになるまでエンジンをかけてみたが、二度と動くことは無かった。
 「何と言うことだ!」ここまで来てトラブルとは…
 本当に悔しいのだが、自前灯火は諦め、外灯周りに専念することになった。
 良い時期にもかかわらず、他の採集者の姿は見られなかったが、外灯に寄る虫の数が少ない。
 クワガタの数もさほど多くは無く、結局普通種23頭を採っただけに終わってしまった。
 「今度こそ採れるのでは…」期待していたのだが、またしてもオオクワガタをゲットすることは出来ず、大変残念な気持ちで山形を後にした。

●2005年8月12日(宮崎県) ニレの洞から取り出したヒラタクワガタ
 今年の夏休みもお盆にしか取ることが出来ず、高い飛行機代金を払っての帰省となった。
 初日は家でおとなしく家族の相手をし、翌日ポイントに向かった。
 いつも行く洞のある木を入念にチェックするが、今年は樹液の出は比較的良いようだ。
 行くと必ず大型のヒラタが入っているニレの木があり、今年もそこへ行って見たところ、ヒラタの♂が顔を出していた。
 「今年もヒラタか…」と思いながら、ピンセットと掻きだし棒で取り出すと、約55ミリの個体が出て来た。
 この日の一番の期待は、昨年12月に見つけた大きなニレの木だ。 
 樹上3メートルくらいのところに洞があり、樹液痕もある。まさにこの木ならといった雰囲気を漂わせていた。(発見時の画像へ)
 ポイントへの道のりを思い出しながら車を進め、無事に辿り着いた。
 「ここだここだ」と納得し、林道を少し歩いてポイントに到着したが、着いてびっくり、あるべきはずの場所にその木が無いのだ。
 下草が茂っていて切り株さえ確認できないが、木が無いことだけは間違いない。
 何十年もかかってあれほどになった木が、私が見つけた半年後に切られてしまうとは…
 期待が大きかっただけに落胆も大きい。残念だがまた別の木を探すしかなさそうだ。

●2006年1月8日(熊本県) 熊本県産オオクワガタ63ミリ
 この寒い中フィールド回りには全く出かけていないのだが、プチ採集記はしばらく更新していなかったこともあり、とりあえず更新することにした。
 右の画像は、一昨年の12月5日に熊本県を訪れた際に、申し訳程度に削った材から出てきた3頭の幼虫のうちの1頭が、オオクワガタとして羽化したものである。
 このページのトップに3齢幼虫時の画像を載せているが、採集時はコクワの3齢かオオクワの2齢かの区別がつかず、また3齢に脱皮した後も頭色が異常に薄かったため、オオクワという期待を抱きつつも、とりあえずヒラタと同定していた幼虫であった。
 9月に蛹になり、我慢できずに掘り出したところ、オオクワであることが確定した。
 完全に体も固まり、色も黒くなったことから、本日撮影を行った。
 私にとっては通算3頭目の熊本県産のオオクワガタであるが、関東に異動になったことを考えると、最後の熊本産となるかもしれない。
 2006年最初の更新ということで今年の決意を簡単に述べるが、今季はオオクワ採集のコツを少しでも掴みたいと思っている。私の周りにはオオクワ採集の達人が沢山おり、残念ながら私の現在のレベルは、その方たちには遠く及ばない。
 出来れば永年憧れているあの達人にお会いしたいと思っているのだが、果たしてその夢が叶うかどうか。 

●2006年2月18〜21日(広島・岡山・香川) 香川県某所の雑木林
 会社のリフレッシュ休暇を利用して、4日間連続のフィールド散策に出かけてきた。
 今回は広島・岡山・香川の3県のフィールドを、虫友のかっしー氏、K氏、オー氏と私の4名で回って来たのだが、岡山・香川は私にとって初めての訪問であり、非常に楽しく回ることが出来た。
 いずれの場所も山梨や能勢のような立派な台木が生えている訳ではなく、何の気なしに見てしまうとどこも同じ様に見えるが、じっくり観察すると、それぞれの環境はかなり異なっていることが分かる。
 何が違いを生むのかと言えば、それは人の手が入っているかいないかと言うことであろう。
 広島は私も4年間住んでいた際に、あちこち回ってみたが、雑木林にはあまり人の手が行き届いておらず、オオクワガタの棲む環境としては、それほど良いとは思えない。
 これに対して岡山や香川は、広島と比べるとまだ人の手が入っており、いわゆる里山の環境が今も多く残されている感じがした。
 しかしながらいずれの県でもオオクワガタの採集は容易ではなく、特に岡山・香川は採集者が入った跡があちこちに見られ、場荒れが進んでいると言う印象を受けた。
 今回は私以外の方々は、ハイレベルのオオクワガタ採集人であり、フィールドを回りながら色々なことを聞かせていただき、大変有意義な時間を過ごさせていただくことが出来た。
 今回各地をご案内いただいたかっしー氏、多くのアドバイスをくださったオー氏、K氏に対して、この場を借りて感謝申し上げたい。

●2006年5月7日(佐賀県産幼虫材飼育) 佐賀県産オオクワガタ幼虫
 本日はGW最終日。このGWは間近に控えた引越しのため全く気分が乗らず、どこにも出かけない連休となってしまった。
 やったことと言えば、これまでほとんどやって来なかった飼育ケースの整理と飼育中の幼虫・成虫の観察くらいのものである。
 菌糸ビンに入れていた幼虫の中には、既に蛹になっているものもおり、その他の幼虫も多くが蛹室を作り始めていた。
 現在40頭近くの幼虫を飼育しているが、中でも私が羽化を楽しみにしているのは、材飼育をしている8頭の幼虫たちだ。
 熊本県産4頭と佐賀県産が4頭、いずれも親虫は思い出深い九州の地で採集したものだ。
 材は虫友のKKさんから購入したニクウス材で、これまで何度も掘り出したいと言う衝動に駆られたが、菌糸ビンと違って気軽に取り出すことは出来なかった。
 しかし今日はどうしても姿が見たくて、思い切って材を削ってみることにした。
 慎重にナタを入れると、程なく食痕が現れ、幼虫の姿が見えた。材は結構乾燥していたが、思いのほか大きな3齢幼虫となっており、とても嬉しい気持ちになった。
 私にとっては初めての材飼育だが、このままなら夏ごろには蛹化しそうな感じだ。
 現在私が使っている材は、産卵にも材飼育にも向いており、重宝している。西日本昆虫社で販売しているので、ご興味のある方はこちらへどうぞ。

●2006年6月11日(ネブトクワガタ羽化) 鹿児島県大隈半島産ネブトクワガタ
 昨年の夏に大隈半島で採集したネブトクワガタのメスが産卵をし、飼育をしていたのだが、本日ケースを見ていたら1頭羽化していた。
 私にとってネブトクワガタの累代は初めてであったが、産卵から羽化に至るまでのプロセスは、それほど難しいものではなかった。
 オオクワの成虫飼育で使用し、湿気過多になっていたマットにメスを入れたところ、程なく産卵し、そのままの状態で飼育をしていた。
 4月にケースを掘り起こしたところ、中には幼虫の姿はなく、代わりに2〜3センチ程度の土の繭のようなものが沢山出てきた。
 その繭のようなものの一つを観察用に割っていたのだが、本日見たときには既に羽化をして繭の外に出ていた。
 このネブトの親は大隈半島南端での樹液採集時に捕獲したもので、ちょっと大袈裟な表現をすれば、現在飼育されているネブトクワガタの中では本土最南端個体かもしれない。
 あまり大きな個体ではなかったが、他のネブトたちの羽化を楽しみに待つことにしたい。

●2006年7月17日(過去最高の75ミリ) 佐賀県産オオクワガタ75ミリ(F1)
 昨年の夏「今年は飼育にも力を入れていこう」と言う思いがあり、約40頭の累代飼育を行った。
 6月〜7月初旬にかけて次々とオオクワが羽化したが、その中でこれまで飼育した中での最高サイズのオオクワが羽化した。
 佐賀県産のF1で75ミリであったが、室温飼育で特別なことは一切していなかったため、まさかと言う感じであった。
 私の記憶ではこれまでの最高は72ミリであったから、それを大幅に更新したことになる。
 菌糸ビンから取り出したその個体は、一見しただけで普通の大きさではないというのが分かるほど、私には衝撃的なサイズであった。
 その他のオオクワも軒並み70ミリオーバーであり、今季は何故か育ちが良かった。また材飼育でも70ミリを羽化させることが出来たのは収穫であった。
 しかし一方蛹で死んだものが、かつてないほどに多かった。
 おそらく蛹であった5月の下旬に引越しをした際の振動が原因だろうと思われるが、そうした意味では大変かわいそうなことをしてしまった。


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